女性エンジニアで社長は超希少動物
私が某社の日本法人を立ち上げることになり、会社の登記など一通りの事務手続きが終わったころの話。
まだ若かったし、技術系の会社なのに女性が社長をしているというのは、相当めずらしかったらしい。 すごく特異な目で見られることが多かった。
そんな会社を立ち上げてすぐの頃に、関連ある業界の展示会に出展した。
まず、ブースにいても「受付の人」だと思われて、「だれか説明できる男性をお願いします。」と言われる。 (これ、昭和初期の話じゃないですよ! 平成ですよ!)
まあ、そんなことは慣れっこで、いちいち気にしていても仕方がないので、私が説明を始める。
私の立ち上げた会社は、本当にニッチな分野で、すごく特殊な特許技術を扱っていた。
その技術は知っている人は知っているものなので、そこで私が説明し始めて話が通じる人は、技術に関わる人で、顧客になりうる人達だ。
でも、説明したところで全く分からない人達は、
私の会社の製品を使うことは絶対にない(将来的にもない)全く無関係な人だ。
あまりにも特殊な技術で、ポピュラーではないので、そんなことは別に普通だし、こちらは何とも思わない。
なので、ドライかもしれないが、「あ~、関係ない業界の方ですね。 でも、わざわざ立ち寄ってくださってありがとうございます。 お互い時間の無駄なので、ではこれで。」 で終わらせるべきだ。
技術系でも、もう少し汎用性のある一般的なものなら、そうならずに少しは
「どこかで使っていただけませんか?」とか、
「他の部署にご紹介していただけませんか?」
といった具合になるのだろうが、あまりにも使うユーザーが限定的なマイナーな特許技術を扱っていたのだから、そういった可能性すらないのだ。
他の分野に転用できないし、立ち上げたばかりの会社には、そんなリスクや手間のかかる本筋じゃない仕事をするのは不可能なのだ。
もう、これは製品の特性上、私にはどうすることもできない仕方がないことだった。
それでも長居する”おじいちゃま”達
でも、中にはそれを認めたがらない来場者がいた。
困ったことに、なぜか製品の技術が理解できないと、
私が若い女性だから(当時は若かった!)技術を知らないと
頭から決めつけて、「偉い人出して」と言ってくる。
大抵の場合は、そこで代表取締役の名刺を出せば、おとなしく帰っていくのだが、
中にはしつこい人がいて、私に対して「君は分かっていない!」など説教のように言ってくるような人もいた。
「理解できてないのはあなたですよ~」と
それとなく指摘はするのだが、聞く耳を持たない。
なぜそうなるか、彼らの心理は全く理解できないのだが、そういう人のほとんどが定年しているようなお歳のおじいちゃまだった。
前に書いたことがあるが、展示会に暇つぶしに来ている、奥様に邪魔にされていて、家に居場所がない、おじいちゃま達だ!
そして辟易したのが、この技術が理解できなくて怒り出すおじいちゃま達が、なぜか
「顧問になりたがる」ことだった。
技術内容すら理解できないのに顧問になってあげるだぁ?!
そもそも製品の技術内容を理解すらできていないのに・・・
展示会でブースに訪れていきなり顧問にしろって・・・
と、こっちは呆れて何も言えないぐらいびっくりするのだが、顧問になりたがるおじいちゃま達は全てを自分に都合よく解釈する。
自分が理解できていないとは思っておらず、「この会社には技術者がいない」と勝手な思い込みをしてしまう。
彼らにとって、女性である私は技術者じゃないらしい。
「君は成り行きで社長になったらしいが、何も分かっていないから、私が顧問になってあげてもいいよ」
とのたまった人も実際にいた! (いや、分かってないのあなただから!)
そして、顧問になりたがる人のほとんどが、大手企業で研究していたとか、大手商社で営業していたとかではなく、あまり聞いたことがないような会社で働いていて、定年した人だった。
でも彼らは必ず、
「大手メーカーには知っている人がいる」
と言う。
顧問なんて雇う予定など全くないし、何度も言うけど、とっても特殊な製品で、使用者が限定されるから、ピンポイントで、ユーザーとなる部署の責任があるポジションの人を知らないと意味がない!
どこの会社もコンプライアンスがあって、知人だから購入なんて、できないと思うけど・・・。 機材だから単価もめちゃくちゃ高いし・・・。
「大手メーカーに知り合いがいる程度では買ってもらえない製品です」と説明しても、
「私が言えば買ってもらえるから」とすごくしつこい。
こんなことが何回かあった。
私も顧問になりたい~!
あの顧問になりたがるおじいちゃま達はなんだったのか・・・。 未だになぞは多いが、振り返って考えるに、きっと老後が不安で収入が欲しかったり、社会的なポジションが欲しかったり、役に立つ自分でいたい気持ちがあったりしたのだろう。
それに、顧問という響きがいい! 何をやるのか今一分からないけど、なんか、偉そうな感じがする!
正直言えば、私も今なら顧問になりたい! ぜひなりたい!
顧問になりたがるおじいちゃま達には、かなり面倒くさくて嫌な思いもしたが、彼らから学べることがある。
それは、顧問になりたいなら、彼らのようなことをしちゃ絶対にダメだということ!
なので、顧問になりたい私は逆をやろうと思う!
- 展示会には押しかけない。 展示会に行くとしても相手が暇そうな時にして、長居しない。
- その会社とコンタクト取る時は最低限、製品知識を予習してから!
- 社長をリスペクト! リスペクトできない人が社長の会社の顧問などなる意味がない!
- 知り合いは本当にビッグな知り合いのみ引き合いに出す。 もしくは引き合いに出さずに自分の中身で勝負!
- 思い込みは禁物。 ダイバーシティな世の中だ。 (あまり世間で言うダイバーシティは好きじゃないけど、それはまた別の機会に!)
- 「顧問になってあげてもいいよ」 ではなく、「もし顧問などさせていただければ尽力します!」と常に謙虚な気持ちでいる
- 「私が言えば買ってもらえるから」というあいまいな口約束ではなく、まず自分がその会社に利益を与えてから顧問の誘いを待つ!
こんなところだろうか。 これって、ほとんど営業の心得な気がする・・・。
さあ、これで私がどこかの会社の顧問になれるかどうか・・・乞うご期待!
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