息子が小学校6年生になった時、全校で行うオリエンテーリングイベントのことで悩んでいた。

 

それは、全学年を縦割りしてグループ分けし、各グループで近くの自然公園を散策して、チェックポイントを回りながら、クイズに答えたりスタンプを集めたりする交流イベントだ。

 

グループのメンバーは各学年から2~3人ずつで構成され、6年生になった息子は、図らずも班長になってしまったらしい。

 

息子は、引っ込み思案ではないが、あえて自分から目立とうとするタイプでもないので、別に班長をやりたいわけではなかったと沈んでいる。

 

私 「それで~。 なんで班長が嫌なの?」

 

息子 「別に嫌なわけじゃないよ。 だけど、地図見ながら先頭に立って、歩く道決めなきゃいけないし、

 

一年生の腕白なS君は、なにかあると気を取られて、ダーっと走り出して脱走しちゃうし、

 

かといって1年生や2年生ばかりにかまっていると、4年生はつまらなさそうにしてしまうし、オレどうすればいいのさ~!」

 

私 「そうか~。 そりゃあ、大変だね~。 で、班長が道きめなくちゃいけないって決まってるの?」

 

息子「え? あ~、決まってないかもしれない。」

 

私 「あのさ~、もしかして、全部何でも一人でやるのがリーダーだと思ってる?」

 

息子 「え? 違うの? 全部できなくていいの?」

 

私 「ママなんて、いつも “私がダメダメだから、社員が優秀で全部やってくれるんですよ~!”って皆に言ってるよ。」

 

息子「は~? ママ、それでいいの? 社長でしょ~?」

 

私 「いいんだよ~。 社長なんて、みんなに目標や方針を示しておけば、決断するときと、責任とって頭下げる時にいればいいんだからさ~。

 

そりゃぁ、時には “ママが自分でやった方が早い!” って思うこともあるよ、”失敗するかも” って不安に思うときもあるよ。

 

でもママが自分でいろいろ動いたら、社員はその3倍動かなくちゃいけないでしょ。 そんなことしてたら、会社も成長しないでしょ。

 

だから腹くくって、でーんと構えて社員を信頼して任せたらいいの!

 

もちろん、管理とサポートはするけどね。

 

信頼して任されると人は嬉しいんだよ。

 

NARUTOでもそうでしょ。 チームワークでしょ。 カカシ先生が良くそう言ってるでしょ~。」

 

これは息子には目から鱗だったらしい。

 

最初は「ママは会社で人に仕事を任せて遊んでいるのか?」と

不信感があったが、大好きなNARUTOの事例は効いたようだ!

 

私 「そして、誰に何を任せるか決めるのがリーダーの大事な仕事の一つだよ。 そこがけっこう肝心。 適材適所って知ってる? 一番得意な人に任せるのがいいよ。」

 

息子 「そうか~、じゃあみんなの良いところとか、得意そうなこと考えよう!」

 

私 「そうそう、それがいいよ。 先ずはどんな役割があるのか考えよう! 一年生の脱走S君は、誰か一年生を担当できる人いるの?」

 

息子 「う~ん、けっこう腕白な子だから大変かも。 でも、もう一人の一年生女子と2年生の女子の担当は、6年生のIさん(女子)に頼んでみる。

 

道順は・・・うーん、5年生のK君とN君二人なら相談しながら決めてくれそう。 4年生にはお弁当休憩中のゲームを考えてもらおう・・・」

 

息子 「でも、頼むときに、どうやって頼めばいいのかな?」

 

私 「素直に実直に頼むのが一番じゃないの? 助けてほしいって。 そして、ありがとうっていう感謝の気持ちさえ忘れなければ大丈夫だよ。」

 

息子 「助けてほしいって、6年生のクセにカッコ悪くない?」

 

私 「あのさ~。 助けてって素直に頼むのと、つらいのに一人で頑張って悲惨な結果になるのとどっちがカッコ悪い? 結果出した方がいいでしょ?」

 

こうして息子は、班のメンバー全員の得意そうなことを考えながら、役割を割り当てるプランを立てた。 そして、”次の班の時間のときに、頼んでみる”と嬉しそうに話していた。

 

さて、イベントが終わって帰宅した息子。

 

満面の笑顔で「すっごく楽しかった!」と言って、イベントの話をたくさんしてくれた。

 

任せたことで、みんなで一致団結して盛り上がったそうだ。

そして、何よりも自分も気負いがなくなり、イベントを楽しめたとのことだった。

 

その腕白な、脱走してしまう、一年生の男の子S君だが、息子は誰に任せようか悩んだ挙句

 

“保育園の時に、年少組の面倒を見た経験がある”

 

ので、自分が一番適任だと思ったそうだ。

 

息子がその子を担当して、一生懸命話しかけ、注意が逸れないようにして、がっちり脱走をガードしたらしい。

 

その結果、先生達に

 

「よくやった!(←実は先生もその子の脱走を懸念していたのか?)」

 

とめちゃくちゃ褒められたらしい。

 

そして、その後卒業するまで、息子はその腕白な一年生のS君から、「頼りになってかっこいい6年生のお兄さん」としてリスペクトされたそうだ。