通訳の現実は甘くない

 

今は年に5件ぐらいの案件しかやっていないけど、仕事の軸をコンサルティングから海外コーディネートの仕事に移行させるために、少し前まで通訳に生活費のほとんどを頼っていました。

 

通訳といっても、私は通訳学校を出ているわけではないし、始めてから数年なので「通訳」といよりも「通訳の端くれ」という感じです。

少し通訳の現状を書きますと、通訳デビューしたところで食べていけない通訳が履いて捨てるほどいます。

英語が話せる=通訳という考えは大間違い。 そんなに甘くありません。

私程度の者が通訳としてなんとか仕事をもらえたのは、幸い、技術系という強みがと、今までの社長・営業経験があったから商談通訳の依頼をいただけたので、なんとかなったのだと思います。

そして、最初にあまり通訳技術がいらない留学生の引率の仕事をもらえたことも大きかったです。

通訳は実績で仕事を依頼するかどうかの判断されますから、実績を0から1にすることが一番難しいのです。

しかもその仕事がすっごく楽しくて、自分も留学していたから海外にあこがれる気持ちが痛いほど分かるし、高校生・大学生の若い子たちの目がキラキラしていて、日本のいろんなことに興味を持ってくれて嬉しかった。

この子たちの人生の思い出深い1ページに関われたと思うと、本当にやりがいもありました。

 

でも、やっぱり人生にはフェーズというか、ステージというようなものがあるんですね。

私の場合は、その仕事が1週間から10日の間にずっと留学生に同行する仕事だったので、

母の逝去で息子を預けることが以前のようにできなくなったこと、

息子も中学生になるので、あまり不在にして問題行動などを起こされたら手に負えなくなること、

それと、その仕事の依頼先から、あまりにも理不尽な話を突き付けられたこともあって、留学生の引率は続けることができなくなりました。

 

試練が来ると、一段ステージが上がる

 

でもその仕事を手始めにして実績を積めたので、他の通訳の仕事は順調にいただいていました。

そして、通訳をしている時に本当に偶然のご縁から、海外コーディネートの仕事をすることになりました。

やってみると、海外コーディネートの仕事がめちゃくちゃ楽しいんです。

まあ、それは今度経緯などの詳細をお話しするとして、通訳の仕事で生活費をなんとかできるので、コンサルは手放して海外コーディネートをメインにしていこうと決めました。

 

それから数か月たった時、通訳関連の事件が起きるものです。 人生のステージの変化って、嬉しいことばかり起こるわけではないですよね。

数日間に及ぶ、大きな通訳案件の場合、たいてい2か月前ぐらい、遅くとも1か月前には依頼が来ることが多いです。

私は「1月の年明けから20日間弱の長期案件」を依頼されていました。

なので、11月終わりごろから徐々に入り始めた1月中の通訳の依頼を全て断って、12月19日に毎年恒例のクリスマス帰省にイギリスへ出発しました。

 

イギリスに到着早々、メールに驚愕しました。

「申し訳ありませんが、案件がキャンセルとなりました」

 

その後、担当の方が電話で平謝りしてくれたのですが、彼女のせいではないので仕方がありません。

契約上、1週間前まではキャンセル料も全く発生しません。

通常なら、なんとか他の通訳の仕事を入れられると思うのですが、年末年始がガッツリ挟まっているので、これを埋めるのはとても難しいです。

 

フリーランス全体に言えることなのですが、こういう話は多いです。

依頼してくる方は、悪気は無く、「(会議・イベントなどが)本決まりじゃないけど、とりあえず通訳を押さえておかないと」と思う訳だろうし、外国人が突然訪問をキャンセルするというのもよくあることです。

そのうえ、他のフリーランス同様に通訳でも価格破壊が起こりつつあるようで、ちょっとした内容だとフリーランスのサイトで依頼するという会社も多いそうです。

そのフリーランスサイトでは、食べていけない通訳がわんさか登録していて、とにかく目の前のお金がほしいので、少額で仕事を受けるみたいです。 質はどうなんだろう?と思うのですが・・・。

 

フリーランス通訳でやらない仕事を決める

 

この事件があって、私は心底「もう綱渡りのような仕事はやらない」と決めました。 (いわいるタイトロープワーキングですね。)

幸い、以前からお金のプロの知人の「収入口は複数確保するべし」という格言を肝に銘じていたので、1月をなんとか乗り切れましたが、もし私が通訳だけを生業としていたらどうなっていたことか!

 

そして、通訳には執着せずに手放そうと思い、「安い案件はやらない」「日程を相手に振り回される案件はやらない」と決めました。

 

そう決めた後、3月になったころ、ある通訳のクライアントさんから、「4月か5月に、1週間の通訳をお願いしたい」という話をいただきました。

理系のかなり難しい(大学講義レベル)内容なので、理系の知識がある私が指名されたわけです。 今までなら、とてもありがたい案件なので、日程をなんとか無理して調整していたのですが、4月は息子の進級などで日程が詰まっているし、5月はイギリスにいく仕事があるので、「無理です。」 とお答えしました。

すると、6月はいかがでしょう? と打診されました。

6月も全滅(←役員をしている会社の事情で本当に身動きできない状態だった)と回答しました。

 

普通はあきれられて、2度と依頼がこないパターンです。

 

しかし、そこのクライアントさん、なんと7月まで案件をずらしてくださったのです。

本当にありがたい話です。 こんなことは滅多にありません。

 

そして痛感したのは、

フリーランスといいながら、フリーランスはクライアントやお金に振り回されて全く自由がない(ことが多い)。

それを変えるのは自分の意識とスキル次第だということ。

収入口を複数確保することがいかに大切がということ。

などです。

 

言い換えますと、フリーランスでやっていこうと思ったら、

スキルその他で他のフリーランスと差別化をはかり、自分だから依頼が来る状態にする(じゃないとフリーにはなれない。)

資産を築く、別の収入を得るなどして、自分なりに生活のセーフティネットを構築する。

これらのことが本当に重要だと実感した出来事なのでした。