自分も言葉遣いで苦労した
私は18歳から大学までずっとイギリスで暮らしており、その後、フランスで暮らしていた。
10年以上ヨーロッパで暮らして、帰国した時には日本人らしくすることに非常に戸惑い、苦労した。
特に、大学の時は、あまり日本に帰国していなかったし、日本人と話す機会がほとんどなかったので、日本語が出てこなくて、うまく話せなかった。
帰国し、日本で就職した時には、敬語や言葉の使い方に本当に苦労した。 けっこう頓珍漢なことをやらかしていた。
例えば、
会社の人:「お疲れ様です」
私:「え? 私疲れていませんけど?」
会議の最後に「では、そういうことで…」
私:「そういうことってどういうことですか?」
などなど。(それらのエピソードはまた別の機会に!) それを苦労して、徹底的に強制したので、逆に言葉遣いにうるさくなってしまうのだ。
社長は”自分の発する言葉の重み”を実感せざるを得ない
社長に限らず、上に立つ人はみなそうだろうが、自分が発した言葉の重みが重くなると、本当に何をどう言うかを慎重にならざるを得ない。
たった一言で商談を壊してしまうこともあるし、社員がやる気をなくしてしまうこともある。 自分が発した言葉が引き起こす結果を、常に考えるようになるものだ。
ぽそっと言った不安や不満の言葉を社員は意外と聞き逃さない。 また、無理やりポジティブにする必要はないが、前向きな言葉を発した方が社内の雰囲気は断然明るくなる。
それに、言葉遣いと食べ方にはその人の育ちが出るとよく言われる。 第一印象は重要なので、良くしておくに越したことはないし、急に身に付くものでもないので、普段から良くしておく方が絶対に得することが多いと思う。
これらの理由からか、息子には子供の頃から悪い言葉を使わないように、徹底的に言葉遣いを注意していた。 もちろん息子に話しかけるときの自分の言葉遣いにも要注意。
気を抜く、と私もつい「ばっかじゃない!」とか「マジむかつく!」とか、言ってしまっていたのだが、それでもラッキーなことに、息子は学校の先生達から、言葉遣いがきちんとしていて、敬語が使えるといつもお褒めの言葉をいただいていた。
初めてのクソババア
そんな息子が、小学校6年生の反抗期に、あることで私と口論になった。
息子は一通り反論したが、息子の意見は通らない。
イライラした息子は、禁断の一言を私に言ってしまった。
「ふざけんなよ、クソババア」
それを聞いた私は激怒。
絶対に許さない!と声を荒げる。
私:「今、なんて言った?」
息子: 「別に! みんな言ってるもん」 と怒鳴り返す。
私:「みんなが言ってるからって、言っていいわけじゃない!」
息子: 「そんなのおかしい、何を言おうと俺の自由だ!」
私: 「は? あなた今ママの稼ぎで暮らしていて、税金も払ってないよね? 自由というのは義務を果たして、自己責任を持てる人が言うことでしょ!」
息子: 「じゃあ子供には自由はないわけ? 言葉遣いなんて、なんでもいいじゃん!」
だんだん言い争いもヒートアップしてくる。
私: 「あなたの自由には範囲があります。 そして今この家で暮らしている以上、ママの決めたルールに従ってもらいます! ママは、この家で悪い言葉を使うのは、絶対に許しません! それはママは ”言葉遣いが、その人の人生を決める重要な要素になっている” と信じているから! 」
息子: 「じゃあ、ふざけんなクソババアじゃなくて、なんて言えばいいわけ!」
私: 「それは自分で考えなさい! とにかく、そんな言葉遣い絶対に許さない!」
困り果てた息子は、やけくそになってこう言い放った。
「….お母様、ちょっとおふざけではありませんか!」
良く考えると、「ふざけんなよ、クソババア」をうまく丁寧語で言い換えている。 息子は虚勢を張って必死で考えて言ったらしいが、これを聞いて二人で大笑いをしてしまった。
言い換えゲームで語彙を増やした成果?
振り返って思えば、息子が小学校の時に「ぷっちょ」(お菓子)をねだられて、ハイチュウを買ってきたら「これじゃない~」と泣かれてしまった。 その時に私が怒って、「面倒くさい! これからうちでは、お菓子の商品名使うのは禁止!」というむちゃくちゃなルールを作ったのだ。
ハイチュウやぷっちょは「ソフトキャンディー」
コアラのマーチやパックんちょは「チョコレート入り焼き菓子」
チョコボールは「ピーナツ入りチョコ」
という具合だ。
最初は「ママ、ひどい~!」と抵抗していた息子だが、だんだんお菓子屋さんやスーパーでお菓子を見るたびに「このお菓子はこう言えるね~」と二人で、言い換えるゲームを楽しんでいた。
それが自然と語彙を増やす訓練になっていたのか、怒られながらもとっさに「ふざけんなクソババア」を丁寧な言い方に言い換えた息子。 まあ、言葉遣いはできているので良しとするけど、息子に初めて、クソババアと言われた日のことはショックでもあり、絶対に忘れられない。
それ以降、息子は2度と私にクソババアとは言わなくなった。 私が「またそんなこと言われたら、ママはショックで泣いて落ち込んで、寝込んで、ごはんも作れなくなって、仕事もできなくなって、貧乏になって、生活ができなくなるよ!」って、がっつり脅かしたのが効いているらしい。
- 投稿タグ
- 社長、起業、子育て、お金、海外