駄菓子屋限定の計算力!
私のすぐ下の妹は、保育士なのだが、なぜか自分が勉強で苦労したと思い込んでいる。
実際彼女の成績はそこまで良くはなかったのだが、すっごく計算が早くて、4歳ぐらいですでに3ケタの足し算と引き算を瞬時に完璧にできていた。 でも、親も本人も勉強ができるとは認識していなかった。
なぜか?
それは、3ケタの足し算と引き算を瞬時にこなすのは、駄菓子屋のみで可能だったからだ!
妹は、おこずかいをもらって駄菓子屋に行くと、10円、8円、25円・・・など一瞬で計算して、今、カゴに入っているお菓子の合計がいくらか言えるのだ。 そして、もらったおこずかいから合計を引いて、「あといくら分買える!」 と一瞬で答えていた。
すごいのはそれだけではない。
当時私たちは3姉妹だったのに、親は割り切れない額をおやつ代として渡してくることがあった。 3人で500円とか。 一人いくらって割り切れないのだ!
そういうときは、3人で相談して配分するのだが、よくやっていた方法として、500円のうち、例えば200円を、3人で分けて食べる大きいお菓子(ポテチとか)を買って、残りの300円を100円ずつそれぞれ好きなお菓子を買う…といったような方法をとっていた。
でも、いつも共有のお菓子が分かりやすい200円とは限らない、そこを妹が140円だと一人120円ずつになるとか、すぐに計算してくれたのだ。
すごい、妹。 天才!
ただ、残念なことに、そんなに計算ができるのに、妹はお金で考えないと答えられない。
「100円持っていて56円のお菓子買ったら、お釣りはいくら?」 と聞くと瞬時に「44円!」と答えられるのに、「じゃあ100引く56は?」 と聞いても、何も答えられないのだ。
「3ひく2は1」とか、簡単な一桁の引き算はできていたので、足し算と引き算の意味は分かっていたはずなのに・・・。
そんな妹は教育熱心なママに
要領が悪いというか、ちょっと残念だが、そんな妹なので成績はそこまで良くなかった。
だから、それが妹のコンプレックスであり、そのコンプレックスを解消したいのか、妹に娘が生まれた時の気合の入り方は凄かった。
この子は、わがファミリーの初孫でもあったため、「じいじ・ばぁば」であるうちの両親も全面協力。
0歳のころから、車の中でかかる音楽は英語の童謡。
実家や妹の家のあちこちに、ひらがな表やアルファベット表。
幸いなことに、この姪っ子も女の子なので読み書きは早かったし、けっこうなんでも器用にこなすので、一家の期待に応えていた。
姪っ子は、保育園の3歳のころには、ひらがなもアルファベットも書けたし、結構英語の単語もいろいろ覚えていた。
受験には無縁だったが、年長の時には、小学校で習う漢字の勉強を始めて、バレエやピアノも習わせて、保育園の卒園式には最後の代表挨拶とかまでやって、妹の自慢だった。
気が向かないことはやらない息子
さて、6歳離れて、うちの息子の場合はどうか?
私は、勉強なんて、高校で超頑張ればなんとか大学に入れると思っているので、家にあいうえお表を貼ってインテリアの見栄えが悪くなるなんて、絶対に嫌だ!
とりあえず、実家に貼ってあるあいうえお表で息子に、「た はどれ?」 とか聞いても、息子は「う~んとね…」と言いながら、見もせずに「これ」と適当に指す。
何度も試したが、面倒くさがってやりたがらないのだ。
ちなみに、これは音符の勉強でも同じで、先生があの一番分かりやすい「ド」の音符をさして「これは?」と聞いても、見もせずに適当に答える。
息子 「ソ」
先生 「違います」
息子 「ふぁ」
先生 「適当に言わない! じゃあこれは?」 と ドよりもっと分かりにくい ヘ音記号の音符を指す。
息子 「ミ」 (怒られそうなので、ちゃんと見て答える)
先生 「分かっているじゃない! さっき適当に答えたでしょ!」
と、こんな感じ。
なので、「この子は、むりやりふんじばって、押さえつけて勉強させるのは無理」だと、あきらめたのだ。
保護者懇談会で大爆笑される
そんな息子が保育園の年中になってすぐ、保育園のクラスで懇談会があった。
先生が、「自己紹介と、お子さんができるようになったこと、がんばっていることを一人一人話してください」と切り出した。
女の子は読み書きが早いので、すでにこのころからお手紙を書いたりしていた。 だから、読み書きができるのは、分かっていた。
でも、男子のママですら、「うちの子はひらがなが書けるようになりました。」 とか 「名前が書けるようになりました。」 とか 「足し算ができるようになりました」とか・・・みんなが言う。
え~、どうしよう。 うちの子、ひらがななんて全然読めないし、書けないし・・・。
悩んだ末、私はこう言った。
「うちの子は、ひらがなは全く読むことも書くこともできませんが、
半額という漢字だけは読めるし、なんとか書けます!」
そして、一同から爆笑された!
そう、うちの息子。 ひらがなは自分の名前にすら興味を示さないくせに、「半額」 だけには異常なほど興味を示し、読めたし、書けたのだ!
「半額」の理由
ある日、息子が紙と鉛筆が欲しいというので、渡した。
すると息子は一生懸命に何かを書いている。
書き終わると、息子は、紙をはさみで切って、テープで自分のおもちゃに貼り付けて遊んでいる。
すごく楽しそうで、ゴキゲンだ!
何を貼っているのだろうとみると、なんとそこには「半額」と書いてあったのだ!
もう、これを見た時は衝撃だった。
何が4歳児の息子をそうさせるのか理解できず、
これはいいことなのか、悪いことなのか?
息子は父親のケチの血を継いでいるのか?
など、いろんなことが走馬灯のように頭をよぎる。
でも、息子は嬉しそうに一生懸命書いた字を私に見せて、「半額だよ。 ママ、半額~」ってニコニコしている。
その笑顔を見て、全てが分かった。
息子はスーパーでいつも「ポケモンパン」を欲しがるのだが、私が
半額の時にしか、買わなかったのだ。
だから、息子はポケモンパンに半額シールが付いていると、買ってもらえるので、大喜びして「半額だよ~、ママ~!」って嬉しそうに言っていた。
その光景が思い出されて、半額の理由が分かった。
そもそも自分が「普通」に該当しないことに気づく
息子が一番最初に書いた文字が「半額」なんて・・・。
普通は、「りょりょ(自分の名前)」とか、「まま」とか書いて、ママは嬉しくて涙して、額縁に入れて飾って取っておくとかじゃないの?
それが「半額」なんて! ショック~!
軽くめまい・・・的な感じを覚えながらも、せっかく息子が頑張って書いたので、とにかく褒めようと思い、「すごいね~。 半額って書けたね~!」と無理やりテンションを上げて褒めちぎった。
褒められて、無邪気に喜ぶ息子。 調子に乗って、どんどん、「半額」と書きまくり、はさみで切って、手作り半額札を作りまくる。
その笑顔と楽しそうな息子を見ていて、ショックな気持ちは霧が晴れるように消えていった。
普通じゃなくていいや! 私だって、息子が書いた最初の字を額に入れて飾るような、そんな
意識高い系で、
森ガール的風貌で、
自然食にこだわって、
オーガニックコットンとかの手作りバッグを持っているような、ママじゃないしな!
褒めちぎられて気を良くしたのか、息子の半額祭りはその後もあちこちで行われた。
そして、それはおもちゃに手作り半額札が貼られているだけにはとどまらず、
道を歩いてお店の前にセールの旗があると「ママ、半額だよ!」。
バスや電車の広告で半額の文字を見ると、車両中に響き渡る大きな声で、
「ママ~、半額だよ! 半額~!」。
と、こんな調子でしばらく息子の半額祭りは続いたのだった。
ちなみに、自分の成績コンプレックスから、娘に完璧な幼児教育をした先述の妹は、
年長で漢字の勉強を教えたのに、
肝心のカタカナを教えることをすっかり忘れていたことに、
娘が小学校1年生の時に気づき、立ち直れないぐらいのショックを受けていたのであった。