使い回しの履歴書

 

前回に引き続き、採用に関する実話で強烈なエピソードを紹介します。

この時も、送られてきた履歴書を拝見し、とにかく先ずは条件にあった方を選別していました。

すると、技術系の経歴もあり、年齢や住所も理想的な40歳手前の都内在住の男性Aさんが目に留まりました。

技術系の専門学校を出た後、私の会社の顧客でもある大手自動車メーカーに勤務していた経歴もありました。 英語が話せないのがマイナスではありますが、国内の営業なのでとりあえずは英語の資料が読めればなんとかなると思い、面接を設定しようと思いました。

 

気になることが一つだけありました。 なんか履歴書が薄汚れていることでした。

 

面接に現れたのはバイク便のドライバー

 

面接に来てくださるようお願いしようと電話したところ、電話に出たAさんはとても穏やかな感じで、対応も良く、好印象でした。 これは期待が持てると思いながら、面接の日程を決めました。

 

さて、面接の時間、会社になぜかバイク便の制服を着たドライバーが現れました。

「え? 今日はバイク便頼んでいませんが・・・」と言おうとしたら、「面接でお伺いしたAです。」 と言いうではありませんか。

 

え~、バイク便の仕事の途中に面接に来たの~? ライダージャケットに革ブーツで?

と、ちょっとびっくりしたものの、まあ、見かけで判断するのもどうかと思い、仕事柄、どうしても都合がつかなかったのかも・・・とも思い、とりあえず中に通しました。

 

 

不採用前提で面接を受けにくる

 

さて、Aさんに来ていただいたお礼を言って、席に着く。

その途端、開口一番Aさんが、言った言葉は

「あの~。 お願いがあるんですが・・・。 不採用だった場合は履歴書を返してください。

 

え~、なんでそんな不採用前提で話を進めるの~? 個人情報が漏れるからとか? と混乱しながらも、「分かりました」と返答して、学歴、職歴などを確認しました。

 

 

ツッコミどころ満載の職歴

 

Aさんに、大手自動車会社で働いて、2年で退職した理由を聞きました。 するとAさん、大手自動車会社の社員ではなくて、派遣されていただけだと言います。

「でも、この履歴書の書き方だとそこの社員ってことですけど・・・。」 と思いながらも、

「では派遣終了となったのですか?」と聞くと、彼のストーリーはこうでした。

 

元々、車のデザインをやりたくて、大手自動車会社で働いていたが、全くそのチャンスが無かった。

その時に、出入りの業者の人が「今度独立するから社員にならないか?」と声をかけてくれて、車のデザインができると思って転職したが、結局デザインの仕事ができなかったので、すぐにやめた。

その後ずっとバイク便のアルバイトをしている。

 

え~、ちょっと待って! いろいろおかしいんですよ~!」 と叫びたくなりました。

 

まず、車のデザインをしたい彼ですが、学校でデザインに関わる勉強を全くしてないんです。 まるで畑違いの学科でした。 車のデザインなんて、素人が思いつきで基礎を学ばずにできるものではありません。

 

次に、車のデザインをやりたくて派遣って意味が分かりません!

自動車会社にとって車のデザインって、根幹です。 世間に発表されるまで、社内でも限られた人しか出入りできないところでやっているし、私も未発表の車に関わるプロジェクトの時は秘密保持契約だの、図面の取り扱いだのがまぁ大変だった経験があります。

 

派遣社員が関われるとは思えないです。 外注もしないはずです。 (有名デザイナーに外注とかはありえるけど)

 

しかも、転職した出入りの業者が立ち上げた会社も、工業デザインの会社じゃなくて、自動販売機とかの営業する会社ですけど・・・・。

これ、適当に話合わせてごまかしているのか、Aさんが本気で信じていたのか、全く理解できませんでした。

 

 

そんなAさんがドヤ顔で言い放った一言

 

う~ん、あまりにもお粗末なストーリだなぁと思いながら、「そうですか~。」と相槌を打つ。

そして、この方はちょっとな~と思いつつも、念のため「ここの自動車会社は弊社の顧客でもありますが、営業とかに行くことに抵抗はありませんか?」と確認しました。

すると、Aさんが「どこの事業所ですか?」と聞いてきました。 「○○です」と答えると、Aさんが、「あ~、あそこですか・・・。」と考え込む。

そして、「あそこの人達は・・・質が悪いです!」と毅然と言い放ちました。

「僕は△△(←別の事業所)にいたので、こちらの方が上ですね!」と、ドヤ顔です。

 

いや、あなた派遣でしょ! しかも、2年で辞めたでしょ! あなたが判断する立場にないでしょ~! と言いたくなりましたが、

また「そうなんですか~。 参考にさせていただきますね~。」としか言えませんでした。

 

 

最後まで履歴書の返却にこだわる

 

さて、もうAさんの採用は無理だな~と思いながら、来ていただいたお礼を言い、「最後に何かご質問などはありますか?」と聞きました。

すると、Aさんは

「あの・・・。 不採用だった場合には履歴書を返してほしいんですが・・・。 また使うので・・・」と言います。

 

やっぱり、Aさんの履歴書は使い回しだったんだな~と思いました。

 

もうさ~、もったいないかもしれないけど、そんなに節約したいなら、PDFで送ってくれればいいのに・・・。

セコくないですか~!

薄汚れた履歴書を送ってこられて、面接でまた使うから返してほしいって・・・そこ、ケチるところ?

本当に就職する気があるのか謎です。

 

その場で履歴書を返そうかとも思いましたが、翌日不採用通知と一緒に郵送しました。

Aさんはその後もあの履歴書を使っていたのでしょうか・・・?

 

常識だとは思いますが・・・

皆さん、履歴書は会社ごとに書き分けましょう! 志望動機や、PRポイントを会社に合わせてきちんと変えた方がいいです。

職務経歴書も、応募するポジションや会社によって求められている人物・職種に合うように表現を変えて書きましょう!